SAINT LAURENT (サンローラン)
1962年、創業者のムッシュ イヴ・サンローランが、PR系で実績のあるピエール・ベルジェ、アメリカの実業家マック・ロビンソンと組み設立したブランド、Yves Saint Laurent(イヴ・サンローラン)。
2002年にデザイナーが引退を表明した後アトリエは閉店。
「イヴ・サンローランのオートクチュールメゾンは、彼以上の才能を持つデザイナー後継者を将来にも見つけることは不可能とし、歴史に幕を閉じた」とさえ言われました。
しかしその後、エディスリマン、トムフォードと言った鬼才によってその息を絶やすことなくブランドは存続し、2012年のエディスリマンがクリエイティブ・ディレクターに再就任し、ブランド名を「SAINT LAURENT PARIS (サンローラン・パリ)」と変更。
大きな転機を迎えます。
エディスリマンと言えば、ディオールを爆発的な人気ブランドに導いたことで有名かと思いますが、
彼がサンローランを傘下に持つケリングに対して要求したのが、バイカージャケット、ミニドレス、タキシードと黒のアンクルブーツなどを取り入れるということでした。
さらに「改革プロジェクト(Reform Project)」と銘打ったブランドの改革で、メゾンの生き残りをかけた前進に注力。
第一の取り組みとしてサンローランのロゴ「YSL」を排除することを決定し、ネームロゴを一新。プレスから苦情を集めるような事態にもなります。
その後もパリから9000km離れたLAにデザインスタジオを建て、フォトグラファーとしての顔を持つ自らの手で広告キャンペーンも刷新。
白黒のグラムロックな世界観を生み出します。
結果としてサンローランは、ケリンググループの中でも1、2を争うブランドへと転身し、2015年第4半期の既存店の売り上げは、前年比27.4%増。
売り上げが伸び悩むラグジュアリーブランド市場で記録に残る数字を叩き出しました。
参照:http://www.vogue.co.jp/fashion/news/2016-04/06/hedislimanesaintlaurentdeparture
エディスリマンというデザイナー
実は2016年に引退し、2016AWシーズンがエディの最後のコレクションになるのですが、改名後の「サンローラン」の世界観を示した彼について少し紹介します。
まずエディスリマンには完全な固定客がいます。
例えば前述にもあるように、彼がディオールのデザインを担当していた時代はディオールが爆発的な人気だった訳ですが、それは「ディオールが好きだからディオールの服を買う」という話とは少し異なっていました。
むしろ「エディスリマンがデザインする服が欲しいから結果としてディオールの服を買う」という事実があり、どれほど有名なブランドに籍を置いても、必ず自らが先に出てしまう稀有なデザイナーです。
世界的にも屈指の入学難易度を誇るフランスの名門校グランゼコールを卒業した後、ルーブル学院で美術史を専攻した彼のデザインテーマは「少年性」と「ロック」。
そんなテーマを非常に丁寧に作り上げた繊細なコレクションには熱狂的なファンが多数存在します。
ディオールのコレクションでは、2000年代初頭、当時トレンドを牽引していたストリートファッションや、アメリカンカジュアルなどで染まっていた街の色を一晩にして変えた、という逸話もあります。
もちろん少し誇張された言い方ではありますが、彼がファッション界に与えた影響は絶大で、落ち目にあったモード界を再燃させるきっかけにもつながりました。
また彼も洋服作りに関しては正規の教育を受けておらず、独学・実践で叩き上げてきたデザイナーで、同じく独学でキャリアを築いたフォトグラファーとしての顔もあります。
トレンドを無視した細身の服作り
そんなエディですが、やはり面白いのは徹底して自らが好む細身の服作りを曲げない姿勢です。
いくら名のあるブランドでも、基本的に顧客の潜在的なニーズを先読みしながらそれをデザインに反映させていくのが常であり、その度合いに差こそあっても完全に無視するところはないでしょう。
ただサンローラン(エディスリマン)は例外です。
彼は自らの愛する細身のデザインを絶対に譲りません。
業界全体がビックシルエットの流れに振れても、きっと簡単には履けないスキニーパンツがリリースされることでしょう。
それでもエディスリマンが好きな人は、その辺りの姿勢まで含めてエディのデザインする服を愛していますので顧客は減りません。
それどころか熱狂的なファンがまた新しいファンを呼んできて、自分の好きな服がトレンドに変わる。
この流れは異常と言えるかと思います。
サンローランの名作アイテム
バイカージャケット (ライダースジャケット)
ここからはそんなサンローランの名作アイテムをいくつか紹介していきます。
まずはエディがサンローランのデザイナーを引き受ける際に条件として提示したアイテム、バイカージャケットです。
オリジナルのモーターサイクルジャケットにエディの新たな解釈を加えられたこちらのライダースは、ミニマムで細身のシルエットと漆黒に輝く上質なラムスキンで、エディらしいロックマインドとエレガンスを感じる逸品となっています。
参照:http://www.vogue.co.jp/fashion/news/2013-12/16/saint-laurent/page/2#moveto
レオパード柄やスタッズ、バイカラーなど、遊びの効いたモデルもありますが、やはり定番のパーマネントモデルであるL01、L17あたりが素敵です。
これらのモデルはミニマムで飽きも来にくいデザインのため、タイムレスにずっと着ることのできる一生物になってくれるかと思います。
定価が60万円近くするのに、入荷日には午前中から飛ぶように売れるらしいです。
スキニーデニム
こちらはもはやブランドの代名詞とも言えるアイテムではないでしょうか。
今では街に溢れているスキニーパンツという型ですが、それを初めて世に送り出したと言われているエディのデザインする一本です。
普通のスキニーが裾幅21cm前後であるのに対して、こちらは17.5cmとか19cmとか、極端に細いこともあって、スーパースキニーという呼ばれ方もします。
腰回りが小さいため、腰に落として履くというような着方はできません。
おそらくかなり細身のドメブラのボトムが問題なく履けるからと言っても油断ならないサイズ感です。
通販で試着なしに買うというのは絶対オススメできません。
いつもよりワンサイズ上げの方がベターという場合もありますし、興味がある場合はサイズ欠けのない早めの段階でお店を訪れるのが良いかと。
価格帯は加工入りのクラッシュデニムやダメージデニムが10万円前後、リジッドの物で6万円~というところです。
本当に履く人を選ぶパンツではありますが、着られるのであれば是非挑戦してもらいたい一着です。
清水買いには違いありませんが、ライダースなどよりは流石に買いやすくなっていますし、ハマれば汎用性の高いアイテムなのでまた探してみてください。
ヒールブーツ
こちらはエディソースではなく、トムフォード期に生まれたデザインに端を発するアイテム、ヒールブーツです。
その頃は「ジョニー」という名前で呼ばれるモデルで、当時タブー視されていた高いヒールを持つメンズブーツです。
ジョニーはヒールの高さが6.5cmでしたが、上のモデルは6cmとなって今す。
こちらは4cmのヒールを持つサイドゴアブーツ。
少しのことで現実とのギャップもなく、程よい高さで歩きやすいモデルです。
サイドゴアのため着脱も容易で、意外と価格が12万円前後なので、実はデニムなどよりも狙い目だったりするのかも、と思います。
ただサンローランの細身のボトムスとの相性が高いのもニクいところです。
こうして紹介してきましたブランド、SAINT LAURENT (サンローラン)。
とりあえず、ガラス越しにでも一度実物を見てもらうことをおすすめします。
詳しいコレクションはこちら
http://www.fashion-press.net/collections/brand/5