Vetements (ヴェトモン)
2014年、デムナ・ヴァザリアが設立したブランド、Vetements (ヴェトモン)。
拠点はパリというファッションの本場でありながら、敢えてアンダーグラウンドなムードを漂わせる、ストリート感のあるアイテムの提案が特徴的なブランドです。
ブランドのデザインは創始者でもあるデムナ・ヴァザリアを筆頭とする4人のデザインチームで行われています。
「デザインチームの体制をとっているのは、最も効率的かつ客観的に服を作れる方法だからだ。僕たちのデザインチームは小さくて、僕を含めて4人。チーム全体としては今、生産管理からセールスや広報を含めて16人いる。コレクションはパリで発表しているんだけど、やはりパリコレ中には友人もジャーナリスト、バイヤーまで皆がこの街にいることが最大のメリット。まだまだ小さなブランドである僕らにとって不利な点といえば、そのコストだね」
引用:http://www.vogue.co.jp/fashion/interview/2015-10/29/vetements/page/2#moveto
インスタグラムを始めとするSNSなどで、瞬時にトレンドが拡散されるこの時代で、規模の小さいうちから広報などにも上手く注力していたのが理由か、立ち上げから数年でカルト的な人気を誇るブランドになっています。
芸能人やアーティストたちがアイコンとして着た時に分かりやすい発信力というか話題性のある「バズりやすい服」作りが上手く、個人的にはそういう売り方をしたいブランドなのかとも思っていました。
大手物流会社の色合いやロゴをほとんどそのまま利用した「DHL」Tシャツなどは極めて分かりやすい例でしょう。
*発売前はロゴ使用権をめぐりDHLとトラブルになる可能性が示唆されていたが、DHLのCEO Ken AllenがロゴTシャツを着た写真をツイッターに投稿し、友好関係であることをアピール。タレントのローラを始めとするSNSで影響力を持つ人物がこぞって着用したことでも話題が広まり、ネット上では「DHLのスタッフを見かけたらヴェトモンですか?って聞きそうになる」や、DHL公式サイトではTシャツが6.50ドルで販売されているため「185ポンドなんてクレイジーだ」など様々な意見が投稿されている。
引用:http://www.fashionsnap.com/news/2016-04-07/vetements-dhl-tshirts/
しかし、そういうキャッチーさだけで終わらないのがヴェトモンの凄みです。
オルタナティブ、グランジといったテイストが滲み出るコレクションも非常に高く評価されており、「90年代のマルジェラの再来」とも謳われる脱構築的なアプローチで生み出されるストリートウェアは、業界内でもトップクラスの話題性を誇ります。
また要所要所でブランドから漂うマルジェラらしさは偶然の産物ではありません。
デムナは2006年にマルジェラの母校としてもお馴染みの名門、アントワープ王立芸術アカデミーのファッション科で修士号を取得。
2009年からはマルジェラのウィメンズコレクションを担当し、そこでの経験が彼のデザインに対するアプローチの仕方に強い影響を与えました。
「ブランドの美学としては、マルジェラにとてもリンクしています。私がファッションにおいての修士を得た場所といえるでしょう。生地の扱い方、裁断方法、そこから新しいものを生み出す過程まで、マルジェラでの経験が現在の私のアプローチを形作っています。」
引用:http://www.upscalehype.jp/2016/01/6880/
ちなみにデムナだけでなく、デザインチーム全員がマルジェラ出身だという噂もあります。
またデザインプロセスについては、以下のように述べています。
「私たちはシーズン毎のテーマに沿ってコレクションを作る代わりに、アイテムを選びます。スカート?ジャケット?ピーコート?ボマージャケット?そして、それらをヴェトモンのフレームに落とし込みます。それとは別に毎シーズン、コンセプト・ピースが存在します。前後で逆に着れるリバーシブル・フーディや日常よく見かけるシンボル(メーカーのロゴ等)をあしらったアイテムがそれにあたります。」
引用:http://www.upscalehype.jp/2016/01/6880/
ヴェトモンの名作アイテム
まだスタートから3年と経たず、元々はレディースのみの展開であったため、メンズラインのスタートは本当にここ数シーズンという新進気鋭のブランド、ヴェトモン。
ここからはそんなヴェトモンを代表する定番アイテムや名作について紹介していきます。
レインコート
まずはこちらのレインコート。
雨の日やフェスなどで活躍する機能的なアイテムですが、こちらはそれをとてもミニマムに仕上げ、ブランド名のロゴが背中にワンポイントで差されています。
天候関係なく着たくなってしまうファッションアイテムとして、ストリートシーンで大流行しているアイテムです。
この影響力があまりに凄まじかったこともあり、これをビジネスチャンスと捉えたのか、背面のスペルを文字った「VETEMEMES」というブランドが生まれた程です。
この件に関して詳しくは以下のリンクよりご覧下さい。
http://www.fashionsnap.com/news/2016-03-31/vetements-vetememes/
リバーシブル・フーディ
こちらは先ほどの引用の中にもあったコンセプトピースの一つ、リバーシブルフーディーです。
ブランドらしいビッグシルエットだけでも十分に素敵なストリート感がありますが、非常に面白い作りが特徴的です。
またリバーシブルにもパターンがあり、上のモデルは前後逆に着ることができるリバーシブルモデル。
そしてこちらは裏表で裏返して着ることができるリバーシブルのモデルになっています。
どちらかと言いますと、裏表のリバーシブルは一般的にも存在したデザインになりますので、ヴェトモンらしい脱構築感を求めるなら前後逆に着られるモデルの方がオススメかもしれません。
フード部分に丁寧な刺繍で刻まれたブランド名も、ちょうど良い具合の主張で人気の理由が垣間見えます。
カットオフデニム
こちらはブランド立ち上げのコレクションと同時に話題を集め、既にあらゆるブランドによる模倣が始まっているとさえ噂のカットオフデニムです。
一本のデニムの中で濃淡の異なるパーツを使って、コントラストを出しながら構造的に組み立てられた一本。
名前にもある不均一な裾のカットオフが堪らなく素敵なアクセントとして効いています。
レディースだけでなく、しっかりメンズの物もあります。
こちらも段差の付いた裾のカットオフはもちろんのこと、真ん中でスプリットしたバックポケットなど、リメイクアイテムらしいディテールが効いています。
実は老舗のワークブランドから、名だたるデザイナーズブランドに至るまで、数々のブランドとコラボをしているヴェトモン。
リーバイスなどのデニムをリメイクしたモデルもあるようなので興味があります方はそちらもまたチェックしてください。
MA-1(ボンバージャケット)
こちらはリバーシブルで着用可能なビッグシルエットのMA-1(ボンバージャケット)です。
正直このオーバーサイズ具合はかなり度が過ぎたと言っても過言ではないレベルで、普通にミドルなコートぐらいの丈感で着るアイテムになっています。
ヴェトモンを愛用していることでも知られるローラや、BIGBANGのG-DRAGONなどの著名人たちの着用でこれまたブランドの名前を広く知らしめるきっかけにもなったアイテムです。
現状ヴェトモンの提案しているシルエットが最も分かりやすく落とし込まれたアイコニックとも言えるアウターではないかと思います。
ロングスリーブシャツ
そして最後はこちらのロングスリーブシャツ。
先ほどのMA-1と一緒で、モデルでも腕まくりをしなければ指先まで隠れてしまうほどの長い袖。
昨今の「エクストリーム(極端な)シルエット」というトレンドを生み出すきっかけともなったヴェトモンを代表するトップスです。
袖に入ったロゴはかなりハードコアでパンクな印象があり、アンダーグランド感を加速させます。
個人的にこの主張の強い袖のプリントはあまり好みではありませんが、パリからこんなスタイルが届けられるという点で真新しさを感じさせてくれるアイテムなのではないかと思います。
シルエットはブランドらしさが溢れてとても素敵です。
ヴェトモンの価格帯
フーディー ¥90,000~
Tシャツ ¥40,000~
デニム ¥120,000~
MA-1 ¥200,000~
こうして紹介してきましたブランド、ヴェトモン。
創始者のデムナは現在バレンシアガのデザイナーも務めていますが、「このヴェトモンでは価格帯を除いては、絶対にラグジュアリーブランドのような提案をすることはない」と述べています。
なので明らかすぎる住み分けは図れていますが、逆にデムナの提案するラグジュアリーに興味がある方はバレンシアガなどを調べてみても良いかもしれません。
(2020年現在デムナはバレンシアガに集中するため、ヴェトモンのチームを離れています。)
日本では現在(2016年8月)、まだ東京・表参道のセレクトショップ、「アディッション アデライデ(ADDITION ADELAIDE)」でしか取り扱いがなく、オークションでも偽物ばかりが流出している状況です。
興味のある方はSSENSEなどを始めとするファッションサイトでアイテムを探すことをオススメします。
公式サイトはこちら