THOM BROWNE (トムブラウン)
2001年、デザイナーのトム ブラウンが自身の名を冠して設立したブランド、THOM BROWNE (トムブラウン)。
若い人で着ている方はそう多くはありませんが、
素敵な服をたくさん知った初老の方々や、クラシカルな趣ある着こなしを愛する20~30代の方々が偏愛するブランドとして有名です。
デザイナーのトムブラウンは元々俳優志望で、大学卒業後はロサンゼルスにて俳優として活動していました。
しかし、あまり芽が出ずニューヨークでいくつかのファッションブランドに勤務します。
アルマーニなどの販売員も務めたそうですが、そんな中、ラルフ ローレンが展開するブランド「Club Monaco」にてデザインを経験したことが転機となり、自らのブランドを立ち上げることになります。
そうして生まれたトムブラウンは、50年代後半~60年代前半のスタイルを彷彿とさせるデザインで、
後にも紹介するスーツアイテムをベースに、アメトラ(アメリカトラディショナル)の再燃を牽引してきました。
トムブラウンのグレースーツスタイル
前述にもありましたが、そんなトムブラウンのブランドの顔と言えるアイテムが、こちらのグレースーツです。
限りなくベーシックなアイテムながら、トムブラウンにとってはこれが全てのスタイルの原点となっています。
デザイナーとなる以前からご自身でヴィンテージスーツをリメイクして着用していたと言いますが、それ以外にもスーツに魅せられた理由があるそうです。
彼はデザイナーとしてデビューしたてのある時、1950年代から飛び出してきたような、スーツをあたかもユニフォームのように着ていた初老の男性に出会い、一瞬で目を奪われます。
そしてこんな男性像を描きたいと思ったのが、ブランドの揺るがぬ軸となっており、スーツというスタイルに強く拘る理由となっているそうです。
クラシックスーツ
ここからはそんなアイテムについて見ていきますが、
トムブラウンのスーツはウエスト位置が高く、それに合わせるように設定された高いボタン位置、短い着丈が特徴的です。
着丈はほとんど袖丈と変わらない程度の長さになっていて、また細いラペルと高めの重心で、一般的なものよりVゾーンが狭めになっています。
また一見するとベーシックな2つボタンに見えますが、実はアイビーらしい段返りの3つボタン仕様になってて、外からは見えない第一ボタンが、ラペルの裏に隠れています。
実はこれも50年代~60年代のスタイルを彷彿とするディテールで、
当時主流となっていた3つボタンジャケットを「敢えて真ん中だけを留める」ことで着崩した、アイビーリーグの生徒たちによる着こなしが浸透し仕様として生まれたものです。
しかしアイビールックを踏襲しながらも完全なる別物なのはこの身頃のダーツ。
アイビースタイルの定番とされるジャケット、いわゆる “Ⅰ型” が、身頃部分にダーツが入ってない寸胴シルエットなのに対して、トムブラウンのジャケットはダーツが入っており、ウエストが強くシェイプされています。
そうすることで、肩がより強調された逆三角形の男らしいシルエットが完成しています。
参照:http://www.jb-voice.co.jp/goldkiss/2014/02/20/24968/
主にジャケットについて説明してきましたが、
このジャケット、トリコロールがアクセントに効いた白のボタンダウンシャツとタイ、半端丈のクロップドスラックス、
そして足元にはウィングチップのシューズを合わせたのがこのトムブラウンらしいスタイルです。
ジャケットとシャツの間にニットを挟むかどうかは季節と好みによりけりといった所でしょうか。
ちなみにトムブラウンは、「グレースーツは絶対に飽きることはない」という持論を持っており、
20着近くあるこれらを右から順に着ていって、最後までいったらまた戻る、という繰り返しでワードローブを回しているのだとか。
一通りスーツに関しての話は終え、ここからはスーツ以外の定番アイテムを紹介していきます。
トムブラウンのアイテム
シャツ
こちらはトムブラウンのスーツスタイルに欠かせない定番のアイテム、オックスフォードシャツです。
もちろん綺麗にアイロンをかけて着るのも良いですが、デザイナー曰く「スーツとの兼ね合いを考えた時に、洗いざらしで着るのが良いバランス」だそうです。
この裏前立てにトリコロールがあしらわれたディテールは、見覚えがあるという方も多いかと思いますが、
実はこれを取り入れたのはトムブラウンが初めてで、今多くのブランドで採用されているのは全て模倣されたものになります。
ジャケットとは対照的にこちらは着丈が長めに作られており、裾に付いているタグが印象的です。
スーツスタイルの中で着る時はシャツインするのがベターかと思いますが、単体で着る場合は意外と外出しして着ても野暮ったくならない良いバランスです。
定番は白ですが、青や黄色などの単色に加えて、こう言った柄物もありますので、お気に入りのものを探してあげてください。
メガネ
定番のスタイルにマストなアイテムではないものの、こちらのメガネもブランドの人気アイテムです。
多くのメゾンブランドがアイウェアを展開し、そのどこかにブランドの名を告げる特徴があるものですが、
このトムブラウンの場合は、耳掛けの端にあしらわれたトリコロールが象徴的ディテールとなっています。
余談ですが、ドラマ「掟上今日子(おきてがみきょうこ)の備忘録」で新垣結衣さんが着用されていたのがトムブラウンのメガネです。
モデルが新垣結衣さんというのもあるかもしれませんが、女性の着用もすごくアリのように思えてきます。
とは言え、知的でモダンな雰囲気を演出してくれるフレームであることは間違いなく、メガネ単体だけ取って見てもお洒落さんに人気のブランドです。
また探してみてください。
ウィングチップシューズ
そして最後はウィングチップシューズです。
こちらもスーツスタイルの鍵となるアイテムですが、解説されないと分からないような外しが効いています。
まずアメリカ的デザインではありますが、どことなくシャープな印象を感じるこの革靴は、実は英国の老舗靴ブランド、Trickr’s(トリッカーズ)で作られています。
また上がトムブラウン、下がトリッカーズなのですが、
ウィングチップの両端がヒールまで伸びていることが分かります。
これはアメリカンブローグと呼ばれるディテールで、英国靴にはあまり見られない特徴となっています。
こういう絶妙なアメリカとイギリスのミックス感もトムブラウンならではかと思います。
参照:http://www.landoftomorrow.jp/blog/2010/10/thom-brownshoes.html
普通に見る分にはあまり気づきませんが、そこには確かな拘りが伺えます。(画像はトムブラウンのワードローブ)
ちなみにこれまた余談ですが、トムブラウンは「男性の足首は、女性にとっての胸の谷間のようなものだと思う。」というセリフも残しています。
このウィングチップに半端丈のスラックスで足首を見せたスタイルは、今では当たり前のようになってきましたが、
これも実はトムブラウンが好み、提案してきたスタイルだったのです。
ご自身も「自分が死んだ後は、『足首を見せた人』として語り継がれるのでは?」と仰っています。
こうして紹介してきたトムブラウン。
是非、一度実物を手に取ってみてください。
詳しいコレクションはこちら
http://www.fashion-press.net/collections/brand/263