m’s braque (エムズブラック)/デザイナー 松下貴宏
オートクチュールで修行し、パタンナーとしてそのキャリアをスタートした松下貴宏氏が、数多くのブランドでメインパタンナーとして活躍した後、2000年に渡仏してパリにアトリエを構えてスタートしたブランド、「BRAQUE」。
元々はレディースコレクションから始まりまったブランドですが、その後メンズラインである「BRAQUE men’s collection」や、夜の遊び着をテーマとしたクロージングレーベル「Bleu Braque(ブルーブラック)」などの展開が始まり、
それらが2007SSに統一されてできたのがこの「m’s braque (エムズブラック)」です。
ブランドコンセプトは以下。
モードとクラシックの間のリアルクロージング
ヨーロッパ各地を回り、ヴィンテージやデッドストックなど現代では再現できない貴重なもの、意匠的な素材や付属で独自のパターンメイキングを表現することによりスタートしたm’s braque。テーラリングをベースにしながら、艶や色気と共に独特の‘抜き’が内在。日本の職人技術を取り入れたり、新しいステッチを試みるなど、途切れることのない創作への意欲。表層的なデザインだけでなく、カッティングや流れる曲線を大切に、着心地とデザインを両立。その圧倒的な背中の美しさ、こだわった‘物造り’を追求し、独自のスタイルを提案。引用:http://www.msbraque.com
デザイナーがパタンナー出身のブランドということもあり、頭の中の構想を自分自身で線に落とせるのはやはり強いです。
URUなども同じくパターンを引いていたデザイナーがしているブランドですが、この類は一般的な型を把握した上で、そこから絶妙な距離をとった外し方を提案してくれるため、表層的な部分以外でも服の素晴らしさを裏付けてくれる良さがあります。
部分的に切り取って見るとダサく感じてしまう外したディテールも、全体としてアイテム及びルック単位で見た時に、不思議と様になってしまうのが魅力的です。
「少し難解で高尚」という表現もされていますが、まさにその通りかと思います。
王道の着飾り方には疲れてしまった、という方のツボにハマりそうな独特なセンスがあります。
また特筆すべきは強すぎる拘りを持って選ばれた素材(生地)です。
アトリエのあるパリ市内のみならず、ヨーロッパ他国に出向いては集めてきたヴィンテージやデッドストック生地を用いて服作りがされます。
「目当ての生地を探して砂漠の中を何日も走り続けた」という逸話もあるほど、とにかく徹底的に自分のしたいことを追求するデザイナーの拘りは、度が過ぎるほどに強く生地に反映されています。
そういったこともあり、このブラックは既製品ではありながら一点物も多く、入荷数自体多くないことでも知られています。
この辺りも服好きの興味関心を引く設定なのではないかと思います。
エムズブラックの定番ジャケット
そんなエムズブラックというブランドの中で定番の名作とされるアイテムがジャケットです。
中でも取り分け「サイドシームレス」の物が有名です。
このディテールに関しまして、自分もどういう仕組みかはっきりと分かっていないのですが、脇に縫い代がない仕様になっていて、独特のパターンとダーツで成立する立体的なカタチのようです。
これまでの内容からして高い技術が求められることは御察しですが、このシームレスという仕様によって、ブラックらしい曲線美が表現され、さらに服自体の強度も増すと言います。
ジャケットのアームと言いますと、値の張るブランドであっても着用時に狙っていないシワが入ったり、非常に難しい箇所であるとは聞きますが、
ブラックはそこがサラリと綺麗に決まってくれます。
アームだけでなく、他にも色々な拘りが散りばめられています。
かなり丁寧に見なければ気づかないレベルではあるかと思いますが、それでも比較的分かりやすいのはボタンです。
ラクダの骨を使用したり、スマイルマークを彫り込んでいたり、素材やデザインで色々な仕掛けが施されています。
クラシックながら遊び心と茶目っ気のあるアイテムです。
価格帯は素材感によって¥50,000~¥80,000辺りとかなり前後しますが、存在感のある頼もしい一着になってくれることは間違いないかと思います。
こうして紹介してきましたブランド、エムズブラック。
在庫自体がそう多いブランドではありませんので、中々巡り会えるタイミングもないかもしれませんが、また是非実物を探してみてください。
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