Maison Margiela |脱構築で世界に影響を与えたブランド

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マルジェラ コレクション

Maison Margiela (メゾンマルジェラ)

1988年、パリにてデザイナーのマルタン・マルジェラが自身の名を冠して設立したブランド、Maison Margiela (メゾンマルジェラ)。

マルタン・マルジェラは世界のファッションに最も大きな影響を与えたとされるデザイナーの一人で、今も熱狂的なファンが多数いらっしゃるブランドです。

少し歴史から紹介しますとマルジェラは1977年にアントワープ王立芸術アカデミーに入学し、ファッションについて学びます。

*彼は同校出身のアバンギャルドな伝説的デザイナー群、「アントワープ6」のメンバーに数えられることがありますが、厳密にはアントワープ6は1980年~1981年の間に卒業した「ドリスヴァンノッテン」「アンドゥムルメステール」「ダーク・ヴァンセーヌ」「ダーク・ビッケンバーグ」「ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク」「マリナ・イー」 の6名のことを言います。(マルジェラは79年に卒業しており、彼も含めて「アントワープ7」と表現される時もあるようです)

そして卒業後フリーランスのファッションデザイナーとしてイタリア・ミラノに渡り、その頃から意図的にライニングや縫い目、衣服構造を明らかにする脱構築スタイルを提案し、1983年にはゴールデンスプール賞も獲得するマルジェラですが、1984年、初めてパリで見たジャン=ポール・ゴルチエのショーに感銘を受け、デザインアシスタントとして1987年までの3年間のキャリアを積みます。

当時のゴルチエはパリの中では奇抜なコレクションを発表しており、ジェンダー、ストリートカルチャー、そしてエスニックドレスに対する彼の挑戦的なコレクションはシーンの注目を独占しました。

このゴルチエでの経験が、後のマルジェラのクリエイションに大きく影響を与えます。

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そして1987年、ジャン=ポール・ゴルチエの元を去った翌年1988年、ブリュッセルの小売業者である ジェニー・メイレンスと共に、自身の名を冠するブランド「MAISON MARTIN MARGIELA(メゾン・マルタン・マルジェラ)」を立ち上げ、パリの目印も何もないスペースに一番最初のショップをオープンし、アントワープの12レオポルド通りに小さなスタジオを構えたのが、このブランドの起源となります。

そして1989年に初のコレクションを発表し活動をしてきますが、マルジェラ本人は2008年にブランドを離れており、そこからはヘッドディレクターを雇わず在籍時から存在したデザインチームが手掛けることとなります。

そのため2008年以前のマルジェラのアイテムを神格化する風潮もあるようですが、それまでもデザインに関するインタビューに応じるマルジェラの一人称が「we」であったことからも分かるように、マルジェラのチームに対する信頼は厚く、マルジェラが離れて以降のチームもまた「メゾン・マルタン・マルジェラはメゾン・マルタン・マルジェラであり続ける」という強い意志を持って火を消さないようにクリエーションを続けていました。

その頃までずっとMaison Martin Margielaというブランド名でしたが、2015年にデザイナーにジョンガリアーノが就任し、Maison Margielaと名前を変えます。

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マルジェラとアノニマス。そしてカレンダータグ

そしてマルジェラを象徴するアイコンと言えばやはりこのカレンダータグです。

タグの読み方は下記のようになっていて、丸のついている数字によって、その服の意味するところが変わってきます。

服でも小物でもどこかにこのタグが付いていて、外から見る分には4隅に止められた糸に見えるのですが、この糸は切り取ったタグをイメージしているのだと言います。

ここには「ブランドネームではなく服そのもので判断してもらいたい」、というマルジェラの想いが込められていて、「アノニマス(無名・匿名)」という意味を込めてタグを剥ぎ取った「糸だけ」のデザインになっています。

何も知らない人からすると「なんだか不思議なステッチだな」ぐらいの印象かも知れませんが、マルジェラを知っている人からすると一目瞭然のため、匿名性という意味ではあまり機能しなくなっているかもしれませんが、ルイヴィトンやグッチのような、誰にでもすぐに伝わってしまうロゴとは異なり、一部の服好きにだけ伝わる少し排他的なシグナリングは素敵です。

この「アノニマス(無名・匿名)」はマルジェラの象徴的な要素の一つで、インタビューなどもFAXで受け答えし、素顔を出さない人物としても有名なマルジェラのパーソナリティーも落とし込まれたディテールとなっています。

マルジェラと脱構築(デコンストラクション)

そんなマルジェラですが、彼が歴史に名を残すこととなった要因は「反モード(アンチモード)」です。

高級志向の1980年代のアンチテーゼとして、軍服のリメイクやダメージデニム、ボロボロのニットといったアイテムで作り上げた貧困者風のスタイル(ポペリズム)を提案し、既存の煌びやかなファッションショー、コレクションを否定。

「モードとは斯くあるべき」という概念を覆し、世に溢れる様々な物体を与えられた役割や用法から解放することで、俗に言う「脱構築(デコンストラクション)」という流れをファッション界に持ちこみました。

先述のダメージデニムやニット、ミリタリーファッション、ペインティング加工などは「最初にマルジェラが作った」と言っても過言ではありません。

ジャーマントレーナー

ジャーマントレーナー

ここではそんな脱構築が垣間見えるアイテムの中から、今もマルジェラを代表する定番のアイテムであるジャーマントレーナーを紹介します。

このジャーマントレーナーというのは、1970年から1980年代の旧西ドイツ軍にて、トレーニングシューズとして正式に採用されていたスニーカーで、インソールに縫い付けられたタグには「REPLICA」の文字が入っています。

この「REPLICA」とは、マルジェラのメンズ・ウィメンズ両ラインでカプセルコレクションとして展開され、ヴィンテージの服やアクセサリーを忠実に再現しつつ、マルジェラによる解釈で具現化したものになります。

「レプリカ」のラベルにはそれぞれオリジナルの用途や年代が記されていて、このジャーマントレーナーには先程の説明通り「70年代のオーストリアのメンズスポーツシューズ」のレプリカであると記述されています。

そしてそんな軍靴であったジャーマントレーナーを、上質なレザーによる素材使いで完全なるファッションアイテムとしているのがこちらのアイテム。(タンの部分にはお馴染みのカレンダータグも入ります。)

また登場した当時のコレクションは「反戦と平和」をイメージしていたとも言われていて、戦争の象徴とも言える「ドイツ軍靴」と「平和の象徴の鳩を思わせる白」の組み合わせにはどこか考えさせられる節さえあります。

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そしてそのジャーマントレーナーに大胆なペインティング加工を施したこちらのペンキスニーカーも、更に脱構築的な発想が垣間見える象徴的なアイテム。

元々白く清潔であったスニーカーが、ぶちまけられたペンキでその本来の美しさを破壊されていますが、何故かそれと同時に本質的な概念を奪われたことで、むしろモードな雰囲気が漂います。

タビブーツ

Tabi レザー アンクルブーツ

もう一つマルジェラの中で有名かつ、脱構築を感じさせるアイテムと言えばこちらのTabiブーツです。

これはその名の通り、日本の作業労働用の履きものである「足袋」を参考にして生まれたアイテムで、二股に分かれたつま先は、足の親指を分けることでバランスをより良く保つためにデザインされており、今日でも作業労働用の履物として重宝されていますが、それをマルジェラはファッションの世界に持ち込みました。

当時製作にあたって、このつま先が割れているデザインはあまりに斬新過ぎ、伝統的な工房ではこれを作ることは不可能だとなったそうですが、マルジェラのシューズを、アントワープにある自身のショップ「Cocodrillo」で最初に取り扱ったゲルト・ブルルート(Geert Bruloot)が紹介したイタリア人のアメリオ・ザガト(Amelio Zagato)が見事に形にし、彼はその後のマルジェラの靴職人となりました。

(ブルルートによると、ディナーの席でザガトにタビの試作品を見せたところ、この靴職人の目が輝いたのだとか。)

そして1988年のMargielaのデビューとなったランウェイで、最初に歩いたモデルが着用していたのだが、そのフィナーレは以来、伝説となっているエンディングで締め括られます。

モデルたちがMargielaのチームが着ていたのと同じ白衣を着て、赤い塗料に浸されたタビ ブーツで、ランウェイの上に足跡ともひづめの跡とも言えない、不思議な赤い模様を残していったのです。

この舞台演出についてマルジェラは「観客はその新しい靴に気付くべきだと思ったんだ。とすれば、足跡よりもそれがはっきりと伝わるものがあるだろうか?」と説明しています。

そしてその場にいた誰しもが、是か非かは違えど、タビブーツについて強く興味を掻き立てられることになります。

これも作業労働用の足袋がファッションの世界に持ち込まれた脱構築の一つでした。

こういった手法でファッションにアプローチしたのはマルジェラが初めてと言われていて、それがこのブランドの魅力でしょう。

今ではあらゆる提案が増え、その発想もデザイナーの中での共通知識となっていたため、真新しさも多少目減りしてきたかもしれませんが、やはり脱構築から生まれるモード感は知らず知らず採用されています。

ショーの仕方も含めてラフシモンズ を筆頭に数々のデザイナーに影響を与え、その道に招き入れた、もしくは(圧倒的なセンスの差を感じさせ)諦めさせた一人ではないかと思います。

マルジェラの名作アイテム

ドライバーズニット

トラックドライバーズニット

メンズアイテムを展開する14ラインの定番アイテム、ドライバーズニット。

正式には「トラックドライバーズニット」とも呼ばれるこちらのアイテムは、名前通りトラック運転手が好んで着用していたニットをデザインソースとした一着です。

座りやすいダブルジップ仕様、乗車時の引っかかりをなくすために省かれたポケット、腕周りが動かしやすい様にさりげなく工夫されたパターンなど、

機能性を高める仕組みが色々と詰まったモデルを、細部まで忠実に表現したアイテムになっています。

丁寧に編み込まれたローゲージウールで保温性も高く、ちょうど良い肉厚さなので、アウター使いだけでなくインナーとしても活躍できる都合の良い一着です。

値段は10万円前後。

参照:http://www.glamour-online.jp/blog/niigatamen/2015_44565.html

5ZIPライダース(八の字ライダース)

マルジェラ 5zipライダース

こちらはマルジェラが設立から今までずっとリリースを続けている定番のアウター、5ZIPライダースです。

両胸に入った斜めのジップから、「八の字ライダース」という呼び方もされます。

かなりシンプルでミニマムな出で立ちながら、アイテムを象徴するriri製ジッパーが絶妙な存在感を持ったアクセントとして効いています。

八の字ライダース

マルジェラらしいエッジの効いたアイテムです。

かなり激しく彩りを変えるファッション界において、20年近く生き続けているメゾンの定番アイテム、

一生モノとしてお使いいただけるかと思います。

値段は30万円前後。

参照:http://www.glamour-online.jp/blog/niigatamen/2015_44552.html

エイズT

エイズT

好みの分かれるアイテムですがこちらのエイズTも紛れもない名作です。

これは名前の通り、売上の一部を、エイズの撲滅、患者へのサポートのために寄付することを目的に販売されているチャリティーTシャツです。

ちなみにプリントされているメッセージは以下です。

プリントT

THERE IS MORE ACTION TO BE DONE TO FIGHT AIDS
THAN TO WEAR THIS T-SHIRT BUT IT’S A GOOD START
-エイズと闘うためにすべき活動はもっとあるが、このTシャツを着ることは良い始まりだ–

引用:http://shoot-speed.sub.jp/?p=121

エイズT 色

少しメッセージ性の強い内容ですが、簡単には内容を読み切れない凝ったプリントのされ方でデザイン性も高く、様々なカラーで展開されるアイテムです。

目立ちますが、さりげなく着られると上手いかと思います。

ただ個人的にはシンプルに裏のタグ跡で気付かせてくれる無地Tの方が好きだったりします。

リング

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Silver Signet Ring

ちなみにマルジェラといえば、リングも人気のアイテムです。

自分も定番である上の型、「Silver Signet Ring(シルバーシグネットリング)」を一つ持っていますが、清潔感の溢れるクリーンな出で立ちと、半分に当たるところで色を変える絶妙なマルジェラらしいセンスが気に入っています。

ちなみにシグネットリングとは、元々貴族の身分証明のような役割を持った指輪であり、自身の印章・紋章を指輪に刻印し、封蝋の際に押しつけて「私が認めた物だ」と示すために使われていたものであり、そのような歴史背景まで見れていれば、逆にグランジなスタイリングにこちらをハズしで着ける粋なミックス感も理解していただけるかと思います。

アノニマス ID ブレスレット

そしてこちら同じくジュエリーの中から、外すことはできない名作「アノニマス ID ブレスレット」です。

IDブレスレットとは元々、そこに名前を刻印することで、身につけている兵士が話せない状態になった場合(怪我、死亡などにより)に、名前や住所、階級や宗教などを判別するために作られましたミリタリーアイテム「IDブレスレット」を原型としているのですが、そこに刻印されるべき名前を匿名とし、無地に変え、ジュエリーとしたのがこちらのアイテムです。

こちらに至っては元々名前を伝えるために生まれたアイテムなのが、それを匿名にされることで完全に本来の意味を失い、またクリーンな見た目はその源流がミリタリーにあることを忘れさせるほど、違和感なくジュエリーとしての佇まいをしています。

毎シーズンリリースされる定番モデルなのですが、ヴィンテージ加工やマット加工など、時々で素材や加工が異なります。

ヴィンテージ加工が入ると少し本来のミリタリー的な表情を取り戻しますが、どれもとてもカッコいいバランス感です。

余談ですが、街の若者のスタイリングを左右するような古着屋が各地に存在し「長髪にダメージデニム」というスタイルが大流行した頃には、そのスタイリングにどこか一点マルジェラを投入するのが粋なミックスだったのだとか。

クリーンなアイテムの中にも、ブランド全体としてグランジなテイストが流れているマルジェラは、そういったヒッピーなテイストの成分も拾ってくれるので、ハズしにもってこいだったのでしょう。

小物に関して言いますと、かなり使えますし、種類も豊富なのでマルジェラの導入としてもオススメです。

こうして紹介してきましたマルジェラ。

また興味があれば、お店を訪れてみてください。

詳しいコレクションはこちら

http://www.fashion-press.net/collections/brand/40

公式サイトはこちら

https://www.maisonmargiela.com/

参照:https://isikifactory.com/style/maisonmargiela-signetring/

https://blog.gxomens.com/maison-martin-margiela-history/

https://note.com/sushi_in_tokio/n/n474f72747a97

http://tau20101010.blog76.fc2.com/blog-entry-666.html

https://www.ssense.com/ja-jp/editorial/fashion-ja/the-uncanny-appeal-of-margielas-tabi-boots?lang=ja

歴史に名を残す伝説的ブランドMaison Margielaメゾンマルジェラとは?

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